高いところから失礼致します!

「苦しさはすぐに消える。諦めた事実は永遠に残る。」を心の中で連呼して、マラソン、ウルトラマラソン、超ウルトラマラソンを嗜む変態ドMランナーです。

 京都マラソン:最後の195mは、42km走ったランナーのウィニングロード

2月21日日曜日、京都マラソン当日。
朝5時半に起きて、自宅から当日朝に移動できる便利さを噛みしめながら、前日と同様に阪急京都線でスタート地点の西京極総合運動公園最寄りの西京極駅に向かう。
ランナーで西京極駅はごった返していたが、公園内は広いのですぐに人がばらけて、7時30分には荷物預けトラックの前で準備しながら待機。昨日の雨が一転、寒くもなければ暑くもない快晴だ。朝陽が眩しい。

他の出場ランナーと同様に、京都マラソンオリジナルのbuffを首に巻き、そして2014年の京都マラソンでもらったbuffを手に巻いて、2回目の出場である事をアピールしながら走る事にした。


陸上競技場内のCブロックの列に並ぶ。
今年から競技場内の大型ビジョンがカラーになったそうで、かなり見やすく、案内が分かりやすかった。日本語以外も対応しており、多く出場している外国人ランナーにも適応していた。


どの大会でもそうだが、整列した後のスタートまでの時間が長い。並んでから1時間くらいストレッチをしながら待つ。今年はそれほど寒くないので耐えられたが、2年前は吹きっさらしのトラック上で待っていて激寒だったのを思い出す。


スタート15分前になって開会式が開始。門川市長の挨拶。直前の選挙で三選を果たしてテンションが高いのが伺えた。

京都マラソンは、2011年3月11日の東日本大震災のちょうど1年後の2012年3月11日に第1回大会が開催された縁もある事から、コンセプトのひとつとして東日本大震災復興支援がある。我々のエントリーフィーの一部が支援金になっているそうだ。そのため、本大会でも亡くなった被災者に対して出場ランナー全員で黙祷を捧げた。

応援大使の紹介もあった。この日のライバルとして勝手に設定させて頂いた山中伸弥教授
山中教授はノーベル生理学・医学賞受賞として偉大な研究者だけではなく、ランニングを趣味とされており、サブ4の記録を持つランナーとしても有名で、これまでのマラソンのご実績を見てみると自分とほぼ同じ完走タイムなので、同じランナーとして走りだけは勝たせて頂きたかった。

朝9時、京都マラソン、スタート!
今週の仕事や昨日の受付後に行った付き合い合コンで溜まったストレスと疲れを発散する時が来た!
この後、数時間だけは目下の人生の悩みやモヤモヤなどの一切を忘却の彼方に追いやって現実逃避し、42.195km先にある平安神宮のゴールだけを一心不乱に目指してランニングを楽しむ。


さすが京都マラソン。とにかく沿道の応援が凄い。
2週連続のフルマラソンでタイムは望めるワケはないので、「ここは切り替えて、このお祭りマラソンを楽しまなければ!」と判断して、沿道側を走って沿道で応援をして頂ける方々とハイタッチをしながら走る事にした。
序盤の四条通を走っていると、ゲストランナーでペア駅伝に出場されている、元阪神桧山進次郎さんとすれ違う。

5km辺りで桂川の堤防沿いを走る。2年前に走ったコースはほぼ覚えているので懐かしい。

桂川沿いを走って、京都の観光スポットのひとつ、嵐山の渡月橋が彼方に見えてきて、もっと近づきたい!と思いきや、その直前で右折してしまう。ちょっとだけしか見えなくてちょっとガッカリ。観光地なので仕方ない。


京都マラソンは、序盤のこの辺りから小刻みなアップダウンが始まる。京福電気鉄道嵐山本線嵐電)に架かる陸橋を走る。自宅の屋上から「おきばりやす(京都弁で「頑張れ」)」の垂れ幕を使って応援してくれる方々に手を振りながら走る。


10km過ぎの京都マラソンのハイライトのひとつである仁和寺に続くコースは細くなって登りが続く。
仁和寺が近づいてきた。それを坊主のカツラに「もうすぐ坊さん」のプラカードを持って応援してくれる沿道の方々が教えてくれた。

仁和寺に到着。沿道の応援も多くなってひときわ盛り上がっていた。仁和寺の門の前には、お馴染みの僧侶の方々による応援が待っていた。如何にも京都らしい光景で、ランナーはみんなここで写真を撮る。京都マラソンを象徴する光景だ。自分も走りながら写真撮影。
僧侶の方々が持つ垂れ幕には「想い出そう!復興支援の灯(ともしび)」と記載されていた。


ここでも沿道で応援してくれる方々にハイタッチで応えて楽しみながら走っていた。
犬ともハイタッチ!何が楽しくてこんな大勢の人が走っているんだろうと言わんばかりのつぶらな顔で、飼い主に無茶な恰好をさせられていて、とてもかわいかった。思わず笑顔をもらえた。ありがとう。

アップダウンが終わり、市街地コースに入る。金閣寺の傍を通って、大盛り上がりの今宮神社の前を右折。


賀茂川沿いを走る。

そして、中間地点の北山通にやって来た。
ここは両車線共にコースになっている折り返しコースなので、2年前はごちゃごちゃして走りにくかった覚えがあったが、今年はそんなに気にならなかった。
ここまでGPSウォッチをほとんど見ず、タイムを気にせずに走って来たのだが、中間地点でタイムを見ると、1時間50分を切っていた。このタイムは今までにない速さだ。ここまで沿道の応援に応えて走って来たのにこのタイムは驚き。もしかして、楽し過ぎてペースを飛ばし過ぎなのではないかと心配になって来た。


北山通の途中で左折して少しだけ進んですぐに折り返す地点があった。
ここは2年前までは折り返さずに先に進むコースになっており、最難関の狐坂という登り坂があった。
「ハーフを過ぎてこの坂か・・・」と辛かった思い出があるが、昨年から狐坂はコースから外れて、フラットで走りやすいコースになった。

京都府立植物園のところでも折り返し。亀田製菓もスポンサー企業の1社のため、エイドではハッピーターンもランナーに提供された。自分は食べずにポケットに入れておいて、ゴール後に食べたが。

折り返し地点のコーンにも幸せのハッピーターンの文字。
折り返しとターンをかけるとは面白い。なるほど。

そして、京都府立植物園の前で京都と言えばこれ、八つ橋のエイド。
エイドではあまり食べないのだが、あんこの甘さが欲しかったので、思わず戴いた。疲れた身体に生八つ橋の日本らしい控え目な甘さとニッキ(シナモン)の香りが染み渡る。


そして、楽しみにしていた昨年から狐坂が外れて、新コースとなった京都府立植物園内のコース。

とても緑が多くて癒されるコースでとても走りやすかった。


そして、賀茂川の河川敷コースへ。ここは未舗装のコースなので、前日の雨でぐちゃぐちゃになっているかと心配されたが、その心配は杞憂に終わった。ボランティアの方々がコース上の水を除いてくれたそう。感謝。


そして、河川敷の途中で30km通過。
フルマラソンは30kmを中間地点と考えるべきと言われ、30kmでその日の調子を判断するのだが、ここに来て沿道の応援に応えている割には1km5分のハイペースを保つ事ができているし、何よりも暑くもなければ寒くもない絶好のコンディション。
こんな自分の調子も気候もベストコンディションってなかなかないんじゃないか・・・と思い始め、ここからスタンスをファンランから自己ベスト更新に切り替えることにした。

河川敷が終わった後は、2年前であればこの後に京都大学方面へ向かっていたハズだが、昨年から設定された新コースとして、京都御所の前を走る。

そして、京都市役所の前で折り返し。立派で歴史観が溢れる建物の前は大盛り上がり。



京都市役所前で35km地点だったのだが、鴨川を渡って神宮丸太町にやって来たところでさすがに疲れが見え始め、ペースが落ち始めた。
「あれ、おかしいな」と心の中で叫び、ここに来て初めて苦悶の表情になった。
その後の京都大学沿いの銀閣寺に向かう今出川通の最後の登り坂が本当にきつかった。ペースガタ落ち。

今出川通の登り坂終わり。折り返し地点のハッピーターンの絵柄がゴールが近い事もあってか、派手になっていた。

京都大学前も過ぎて、残り1km。ゴールも近い。


最後の角を曲がると、眼前に平安神宮の赤い大鳥居が見えてきた。こんなに分かりやすいゴールは他にはない。
おかえりやす(京都弁で「おかえりなさい」)」の応援に思わず笑顔になる。
前日受付の時に森脇健治さんも言っていたが、フルマラソンの42.195kmにおいて、42kmを走った後の残りの195mは、42kmという距離、そして自分という最大の敵に克ったランナーに用意されたウィニングロード。
今回、これまでの中でも最高の走りが出来たので、その想いは特に強く、まさに歓喜のウィニングロードだ。

京都マラソン、2回目のゴール!
グロスタイムで3時間40分ということは、ネットタイムでは3時間40分を切っているハズだ。

完走者達を和服姿の門川市長が祝福。

振り返れば、ゴールゲートの後ろには平安神宮、眼前には赤鳥居。
このゴールゲートからFinisher'sタオルを受け取るまでの間で、まさか京都マラソンで自己ベストが更新できるとは思ってもいなかった事もあって、思わぬ結果にしばし放心状態で感動して涙が出そうになった。


完走メダルと完走賞。
完走賞を見てみると、昨年11月の大田原マラソンで出した自己ベストの3時間48分を10分も更新しての3時間38分だった。
2年前にあった難関の狐坂がなくなって走りやすくなってベストコンディションであったためというのもあるが、2年前に苦しんでタイムが散々だった苦い思い出が歓喜の思い出に変わって嬉しかった。
生涯の夢とも思っていたフルマラソンでサブ3.5(3時間30分以内での完走)が手の届くところまできた。
そして、今日のライバルとして想定していた山中教授も、自己ベストの3時間44分で完走されたそう。途中で抜いたのを全く気付かなかったのだが、ようやく走力で勝つことができた。
そして、来月の大挑戦に向けて良い弾みになった。最高の状態で来月の勝負の日を迎えられそうだ。

そんな興奮冷めあらぬ放心状態の中で荷物を受け取りにみやこめっせに行くと、京都マラソンでお馴染みの完走後の舞妓さんとの記念撮影の列ができていた。
2年前は疲れている上に記録が芳しくなかった事もあって、長蛇の列に並ぶのは辟易して撮影は諦めてしまっていたが、今回は自己ベストを更新できた記念に列に並んで、舞妓さんと写真を撮影してもらった。これは今後の良い思い出になりそうだ。

思い返してみると、京都マラソンは、沿道の応援も盛大で素晴らしいし、ランナーにとってストレスゼロの大会運営だし、参加賞やエイド、サービスなど他大会と差別化しているし、魅力的で楽しい大会である事を再認識。今後も当選するかは分からないが、エントリーだけは継続していこうと思った。
そして、こんなリアクションが薄く無感動でつまらない成人男子に、こんな非日常と刺激、感動、達成感、気持ち良さを手っ取り早く与えてくれて、それがこの先いつまでも残り、自信と生きている実感を与えてくれるマラソン。やっぱり止められない。