高いところから失礼致します!

「苦しさはすぐに消える。諦めた事実は永遠に残る。」を心の中で連呼して、マラソン、ウルトラマラソン、超ウルトラマラソンを嗜む変態ドMランナーです。

 最近読んだ本達

ブクログ、更新しました!
http://booklog.jp/users/kohki3103609

舟を編む

舟を編む

2012年の本屋大賞受賞作ということで、三浦しをんの作品を初めて読んでみた。
読了した結果、かなり面白かった。あっという間に読めた。
「大渡海」という辞書新しい辞書の編纂メンバーに選ばれた主人公が、辞書編集部の個性的な面々と共に、辞書の世界に没頭していくという話。
題名の「舟を編む」とは、言葉の大海原を渡る為に必要な辞書という舟を編集する(編む)という意味だそうだ。
特に、辞書のこと以外は世間知らずな主人公と今風な若者気取りの同僚とのやり取りが面白くて、読みながら笑いを堪えるに必死だった。
それに、恋愛に対して不器用な主人公が恋をするくだりも面白かった(意外と早い段階で恋が成就するので、ちょっとむかついたw)。
その他、辞書をテーマにするだけあって、普段使わないような語彙がたくさん出てきて、辞書を引きながら読むことでとても勉強になった。こういう勉強にもなる小説が大好きだ。
この本を読んだタイミングがちょうど「しまなみ海道ウルトラ100km遠足」の道中だったので、思い出深い本になりそうだ。
第五番

第五番

好きな作家のひとり、久坂部羊の最新作。
チームバチスタの栄光」などで有名な海堂尊と同様に、医師で作家という経歴を持つので、話が面白いだけではなく、医師ならではの医学的知識がたくさん出てきて本当に勉強になる。医師故に、病院の裏事情や病態の描写などが非常に生々しいのだが・・・
話の内容は、エボラ出血熱、AIDS、狂牛病クロイツフェルト・ヤコブ病)、SARS(重症呼吸器症候群)に次ぐ5番目の疫病として、致死率が高く特効薬が無い「新型カポジ肉腫」が日本を襲うという話。
主人公は、前作の「無痛」でも登場した、豊富な医学的知識と卓越した診断力から患者の外見だけで悪いところや病気が分かってしまう医師が主人公。殺人も病気の一種といい、殺人を犯す人間には犯因症というものも見えてしまう。
最後に「新型カポジ肉腫」の治療法がみつかるのだが、その方法がかなり衝撃的だった。日本で蔓延した理由が納得できた。
また、医学の目標はあらゆる病気の撲滅だが、もしそれが達成されてしまうと、医学は自らの存在意義を減じるという自己矛盾を内包している事実。
これだけ医療が進歩し、衛生状況が改善されているのに、新しい疾病が出現するのは何故かという疑問。
これがこの疾患のパンデミックの理由に絡んできて、とても考えさせられた。
楽園のカンヴァス

楽園のカンヴァス

美術などの芸術には全く疎い自分なのだが、書店で「アートミステリー」という見慣れない謳い文句を見掛けて、半ば衝動的に購入した。
話は、巨匠アンリ・ルソー(この作品を読むまで知らなかった)の大作「夢」とほぼ同じ構図・タッチで同時期に描かれた作品「夢をみた」があることが判明し、そのハンドリングライト(取り扱い権利)を巡って、ニューヨーク近代美術館MoMA)のキュレーター(学芸員)と日本人女性研究者がその真贋判定に火花を散らすという話。
話の中にはルソーがその絵を描くに至った背景も書かれているのだが、そこには誰もが知るピカソも登場する。ピカソはこのルソーに影響を受けていたそうだ。
著者の豊富な美術史に関する知識だけではなく、天才画家の情熱(passion)が注ぎ込まれた作品に対峙する2人の研究者がそれを汲み取って最後に真贋判定するシーンはとても感動した。
「傑作というものは、全てが相当な醜さを持って生まれてくる。この醜さは、新しいことを新しい方法で表現するために、創造者が闘った証しなのだ。美を突き放した醜さ、それこそが新しい芸術に許された新しい美なのだ。」
こういった結論を2人の天才画家は持った上で大胆で独創的な絵を自信を持って描いていたことを知って、どこの世界でも創造者の考え方は違う点を思い知らされた。
芸術に全く興味が無い人でも感動を覚える、とても良い作品でした。