高いところから失礼致します!

「苦しさはすぐに消える。諦めた事実は永遠に残る。」を心の中で連呼して、マラソン、ウルトラマラソン、超ウルトラマラソンを嗜む変態ドMランナーです。

 奥出雲ウルトラおろち100km遠足:春の嵐の中に完走!

2018年4月14日土曜日朝5時、真っ暗の奥出雲町横田庁舎の前に約500名のウルトラランナーが集結。
島根県でのウルトラマラソン1本目、奥出雲ウルトラおろち100km遠足がスタート!

スタートして1時間もしないうちに空が明るみ始めた。
スタートから予想通りの田舎道。コース沿いに横断幕もあって我々ランナーを歓迎。早朝から家の前に出て応援をしてくれる住民の方々が多数。とても嬉しかった。


約10km地点の日刀保(財団法人日本美術刀剣保存協会)たたらエイド。
日本刀の制作には、すぐれた玉鋼(たまはがね)が原料として欠かすことが出来ないず、この玉鋼を作るには日本の伝統的技術の「たたら吹き」をする必要がある。この「たたら」の操業が行われている世界で唯一の操業所が近くにあるそうだ。 ただ、たたらの操業は、1月から2月にかけて空気の乾燥している時期に3回、通産9日間だけしか行われないそうだ。こういう日本の伝統文化は絶やさずに残してほしいものだ。と、願うだけは簡単なのだが・・・
そこでは、おぼろ豆腐をいただく。

峠の登り坂を走って登って農道を走り、20kmの道の駅・酒造奥出雲交流館に到着。甘酒を振る舞ってくれて、自然な甘みが美味しかった。


その後は、JR木次線に沿ってのラン。亀嵩駅では出雲そばを振る舞ってもらい、出雲三成駅を越えると、30km地点である大きな集落である仁多に到着。



仁多庁舎は60kmの部のスタート地点でもあり、100kmの部では25km走ってまたここに戻ってくる。
30km走って、ちょうど3時間。つまりキロ6分でここまで走れている。良いペースだ。


住民の方々が走って庁舎を出ていく我々を応援。頑張ります!何て平和な光景だ。

5km走って、出雲八代駅を越えた辺りにある奥出雲多根自然博物館の近くにある長者の湯の前でエイド。
このままお風呂に入りたい気持ちを抑えて、再スタート。
ここでは名物の仁多米とこの辺りで飼われている鶏が生んだ卵の卵かけごはん。


40kmのトウトウの滝という景勝地のエイドでは、奥出雲高原トマトのジュース。美味しい!


その後はビーナスエイドを経由して、約5kmの往復コース。
折り返しの48.4kmの阿井コミュニティセンターのエイドでは、名物の焼き鯖。
鯖は一番好きな魚ではあるのだけれど、走っている時、しかもまだ半分にしか至っていないところで食べられそうになかったので、写真に収めるだけ。

そして、55km地点の仁多庁舎に再び戻って来た。たくさんの住民の方々に大歓迎を受けて嬉しかった。
ここでは、猪肉のステーキ。
しかし、この大会はエイド毎でこの辺りの名物料理が食べられて嬉しかった。
全てのエイドで変わり映えのしない同じものしか出さない大会が多い中にこういったサービスは珍しく、大会側の配慮は嬉しい限り。
「次のエイドでは何があるかなぁ」と辛い中にささやかな楽しみが出来る。
リピーターが多い大会である事が頷けた。他の大会でも見習って欲しいものだ。
ウルトラマラソンではあまり固形物を食べない自分も、ここまででついつい食べ過ぎてしまった。

仁多庁舎内で長めの休憩を兼ねて着替えをして、後半戦スタート!
直後にこの大会のハイライトである景勝地鬼の舌震(したぶるい)」が近づいてきた。
まだまだ余裕があるので、だらだら続く長い登り坂も走って登って、「鬼の舌震」に到着。
ここは観光地で観光客もいるので、ランニング禁止。


舌震の”恋”吊橋という吊橋を渡る。吊橋の上からの景色が綺麗だった。


その後は、散策路をその名前の由来にもなっている奇岩群を見ながら早歩きで前に進んだ。



そして、「鬼の舌震」の歩行区間を越えて62kmのエイドに到着した頃には雨が酷くなってきた。しかも風も出てきた。
残り38kmは風雨の中での闘いが予想された。

雨に濡れて身体も冷えてきたが、こんなところで負けられない。
メンタルは大丈夫で、脚もまだまだ残っていたので、どんどん先に進む。
68kmの馬木エイドに到着した頃にはどしゃ降り。
エイドのテントの下で雨に濡れて椅子に腰かけてガタガタ震えているランナーがいたが、雨の中でのランでは止まったら負け。止まったところでウェアが乾くワケではなく、寒さによりどんどん体温が下がって低体温症に陥ってしまう。
なので、絶対に歩いてはいけない。走り続けていれば、身体が温まるので、雨の中でも寒さに勝てる。
そのことを長年のウルトラマラソンの経験で知っているので、絶対に歩かなかった。
70km手前では有名な棚田があったようだが、雨でその景色も台無し。

峠の登りを走って登った後、下りを一気に駆け下りたところでJR木次線八川駅のエイドに到着。
遂にこの大会の最大のハイライトでラスボスでもある「奥出雲おろちループ」に挑む時が来た!
闘いの前にエイドで、雨に濡れて冷えた身体をストーブと温かいジビエ団子スープで温めた。



ボランティアの方が用意してくれていたホットカルピスがかなり美味しくて、身体が温まった。

最後に挑むのは、73kmの八川駅から片道約10km続く登り坂。
ここはさすがに疲れが見えてきて走っていられずに、歩きも交えながら登った。
登っている最中、雨と風が吹き荒れ、春の嵐がピークだった。
顔を前に向けて登っていられない程、登っている最中に「自分はこんな島根県の田舎で雨風にさらされながら何をやっているんだろう」と笑えて来た。
まさに、ヤマタノオロチを退治するために雨風の中を向かうスサノオノミコトのような気持ちだった。
登っている坂道と川を挟んだ向こうにJR木次線が並走していたのだが、こちらに来たら是非見たかった、JR木次線を走る観光列車「奥出雲おろち号」が雨風の中に四苦八苦しながら登っている時に、ちょうど「奥出雲おろち号」が通過。
ちょっと遠いけど、まさかのタイミングで拝む事が出来て良かった。
一車両だけあるトロッコ列車から乗客が手を振って応援してくれていたので、それに応えて元気が出た。
さぞかし、稀有な目で我々変態ランナーを見ていたことだろう。

坂の途中にある延命水エイドに到着。
ここは舞茸の直販所だそうだ。仁多米の舞茸おにぎりとチキンラーメンで身体を温めて再スタート。冷えた身体なので、長居は禁物。

延命水エイドを出た直後、出雲坂根駅を通る。ここは、急峻な登り坂を登るために必要な全国でも珍しい三段式スイッチバックがある駅として有名だ。見たかったけど、今回はそんな余裕無し。

いよいよ、おろちループ。早くそのループを見てみたい!

とぐろを巻いたヤマタノオロチを思わせる日本一のループ橋であるおろちループに到着。
こんな大きなループは初めて見る。
そこを自分の足で走って登れるなんて、感動。




おろちループからは、山の中腹を走る木次線の車両が。あそこから見るおろちループも絶景なんだろう。


そして、遂におろちループを登り切り、折り返し地点の85kmの三井野原駅に到着。
片道約10kmに及ぶ登り坂だけど、斜度はそれ程ではないので、歩きも交えながら走って登り、無事制する事が出来た。

残り15kmは、登って来たおろちループに向かう坂道を駆け下りるだけ。
もう最後なので、登りで蓄えてきた体力と脚力を全部開放して、ハイペースで一気に駆け下りた。
この最後の下り坂が一番楽しくて気持ち良かった。
まさにウイニングラン。もう最高のひとときだった。


坂道の終わりである八川駅に戻って来た。
ここでボランティアの方から、「おろち退治完了」というステッカーを頂戴した。これは面白い。完走証と同等の戦利品だ。


最後は八川駅から1駅分を走って、スタート地点でもあった出雲横田駅前の横田庁舎前に戻って来た。

自分がゴールする前には雨が止んでくれた。横田駅前の地元の子供達も家の前で「おかえりなさい!」と出迎えてくれた。

そして、横田庁舎前で無事ゴール!

無事、雨風の中、100kmを完走出来てひと安心。カレーを食べて、冷えた身体を温めて一服。

完走タイムは、11時間53分09秒。完走メダルの形は、奥出雲町特産の雲州そろばんにちなんだものだそうだ。

この悪条件且つアップダウンが多いコースの中で、12時間以内の完走は上出来だ。
これまでに雨中ランは何度もあって百戦錬磨の自負があったが、台風が来たかのような張るの嵐による雨と風の中でのランは初体験。
そんな中でも、「2017年は台風で3大会が中止になる事態に陥ったが、どうやら2018年も天災を呼ぶ男は健在だ笑」と笑い飛ばし、「自然に負けるか!」の心意気で無事クリアできた。
自分がゴールした17時前には春の嵐は止んだものの、18時頃から更にその嵐が悪化し、宿泊先に戻った頃には外は暴風雨だった。
そして、今回、果たして後続のランナーの方々は大丈夫だったのか、とても心配になった。
55km地点の出雲三成駅前の仁多庁舎のレストステーションで荷物を受け取って着替え、携行補給食の補充もしようと思ったら、補充用の携行補給食をゴール地点に預ける荷物に間違えて預けてしまった事に気づき、危機一髪・・・と思ったが、スタート時に多めに持参していた事やこの大会のエイドの充実さに助けられて、全く影響が無かった。
この大会のエイドの充実さは素晴らしい。
さすが、ウルトラマラソンの第一人者である海宝道義さんの海宝ロードランニング主催の大会であり、ランナーの事が分かっているなぁと感心した。
土曜日は、斐乃上荘で温泉にゆっくり浸かって疲れを癒し、日曜日にゆっくり帰阪。
奥出雲町から松江駅に移動して、電車を待っている間に出雲そばを食べて、特急やくもで帰阪。
これで、島根県でのウルトラマラソン第1戦「奥出雲ウルトラおろち100km遠足」を予定通り完走する事が出来た。
島根県知事から「島根ウルトラの神」を授与されるために、第2戦の5月の「えびす・だいこく100kmウルトラマラソン」、第3戦の6月の「隠岐の島ウルトラマラソン」もこの調子で完走だ!