高いところから失礼致します!

「苦しさはすぐに消える。諦めた事実は永遠に残る。」を心の中で連呼して、マラソン、ウルトラマラソン、超ウルトラマラソンを嗜む変態ドMランナーです。

 サロマ湖100kmウルトラマラソン:諦めた事実は永遠に残る、90kmまで

サロマ湖100kmウルトラマラソンの後半戦。
54.5km地点のホテルルートイングランディアサロマ湖のレストステーションで着替えを早々に済ませて、後半の長丁場に備えて携行補給食を詰め込んだトレイルランニング用のバックパックを背負って、慌ただしく出発。
前半の予想外の暑さにやられて体力を奪われたものの、足は全然痛くない。まだまだ走られる。
昨年の6月に完走した隠岐の島ウルトラマラソンで学んだ足裏とひざのテーピング、この日のために購入したクッション性の高いゲルサロマ3のおかげだ。
レストステーションでひと休みしたことで体力も少しだけ回復して、60km地点までこれまでのペースを落とさず、順調に到達。

60km過ぎ、木々が直射日光を遮る木漏れ日の下を走るコースに入る。
ここは「魔女の森」と呼ばれる約2km続く森林コースだ。
暑さを忘れられ、すごく気持ち良かった。


束の間の森林浴を終え、佐呂間大橋という橋を渡って、68km地点にこの大会の名物エイドステーションである白帆・斎藤商店に到着。
かなり目立つ黄色の建物、この大会の案内で見て知っていた。
ここの店員の方々か、元気良く我々を迎えてくれて、冷たいタオルを提供してくれた。この暑さなので、本当に有難かった。
そして、ここには北海道の炭酸飲料としてガラナと共に有名な「リボンナポリン」というオレンジ色の炭酸飲料を振舞ってくれて、疲れた身体に炭酸飲料が染み渡った。
この大会で一番のエイドだった。噂通りだ!

ただエイドステーションが充実していたのはこの辺りまで。
多くの参加ランナーがRUNNETのレポートで報告しているが、制限時間内の完走を目指す我々くらいのランナーになると、5kmごとのエイドは充実しているものの、その間の2.5kmのエイドにあるはずの水がこの暑さで間に合っていなくて、給水ができず、並んでかぶり水しかできない有り様だった。
「給水まで500m」という看板を見て、給水できるのを楽しみに走ってきても、かぶり水だけで水が飲めないとあってはガッカリ。
というか、この暑さの中で走っている我々にとっては、水が飲めないのは死活問題だ。
後半のコース周辺には自動販売機が全くないので、なおさらである。
この暑さだから仕方ないかぁと思うとと共に、自分より後にやってくるランナーのことを思うと大会側には何とかして欲しかった。この大会への唯一の不満。
白帆・斎藤商店を過ぎるとすぐにサロマニアンという宿の屋根の上から大漁旗を振って応援してくれている方々がいた。
70km手前というまだまだ終わりが見えない心も身体も一番辛い時に、笑いをありがとう。
辛さが顔に出始めてきた頃に笑顔をもらえた。

70km地点到達。ここの関門時間が14時06分なので、あと27分しかない。とうとう30分を切ってしまった。やばいなぁ、さすがにペースが落ち始めてきた。

75km地点のサロマ湖鶴雅リゾートという大きなエイドステーションに到着。
ここには、既に100kmを完走されたエリック・ワイナイナ選手が完走メダルを首にかけて、我々ランナーを応援に来てくれていた。
こちとらまだ25kmもあるのに、既にゴールされて、余裕の表情で握手をしてくれて、「頑張って下さい!」と声を掛けてくれた。
すごいなぁと思うと共に、この苦しみから逃れられて羨ましい限り。
羨望の眼差しで見つめながら写真を撮ろうとすると、「一緒に撮りましょう!」とワイナイナ選手から申し出てくれた。
何て良い人なんだろう。また、ワイナイナ選手が好きになった。
2013年9月に秋田県田沢湖ラソンに参加した時もスタート前に記念撮影に応えてくれて、これでツーショット写真は2回目だ。
俺、笑顔になっているけど、これは作り笑顔であり、この時点でそんな余裕は全く無し。

ワイナイナ選手にせっかく元気をもらって75km地点をスタートしたものの、その元気は長続きせず、身体の疲れがピークに達して急ぐことができず、歩くことも多くなってしまって、この辺りが本当に辛かった。
常に関門の時間に追われているという緊張感、まだ25kmあるという事実から、走っていても全く楽しくなく、辛さしかなかったので、いつ心が折れてしまってもおかしくない精神状態だった。
これまで参加してきたウルトラマラソンでは、この時点に来ても制限時間には余裕があったおかげで、関門の時間に追われるという緊張感と慌しさはなかったので、ここまで追い詰められたのは初めてだ。
しかし、こういう辛い時に思い出すようにしている、このブログの自己紹介のところにも書いてある、ツール・ド・フランスを7連覇した実績を持っていた、ランス・アームストロングの、

苦しさはやがて消える。諦めた事実は永遠に残る。

という言葉を何度も繰り返して、走っては歩き、歩いては走りで諦めず、前へ進んだ。
ここで諦めたら、絶対に一生後悔する!

80km手前、ここでペースダウンしてしまったこともあって、後ろからNHKのランスマスタッフを引き連れたピンクのウェアの女性ランナーが自分を抜いていく。
おぉ、NHK BS1の「ランスマ」のスマイルランナーの中村優さんだ。
彼女、今回がウルトラマラソン初挑戦なのに、ここまで来ても普通に走っている。凄い!
自分はこの体たらく。彼女より実績はあるハズなのに、情けないなぁ。

80km地点に何とか到達。
ここの関門の制限時間が15時24分なので、あと16分しかない。
70kmから80kmまで、一気にペースダウンしてしまったので、当たり前だ。
いよいよヤバい。果たして90km地点に辿り着けるか。
もうこうなったら、GARMINのForeAthlete 910XTJの1km毎のペースなんて関係ない、とにかく少しでも走って一歩でも前に進むだけだ。
あれだけ音楽を聴きながら走るのが好きな自分が、いつの間にか、イヤホンを取って、一歩でも前に進むことに集中していた。音楽なんて聞いてられる余裕はない。

80km地点の森を越えると、この大会のハイライトで噂に名高い「ワッカ原生花園」に出た。
ここは、網走国定公園内のオホーツク海サロマ湖を隔てる砂州に広がる海浜植物の一大群落地で、約300種類以上の草花が咲く有名な観光スポットで、北海道遺産に選定されているそうだ。
この大会のホームページで何度もここを走るランナー達の写真をこれまで見てきて憧れてきた場所だ。
ここが有名なワッカ原生花園か・・・
その憧れの場所に辿り着けたことに感動し、美しい草花と青空、オホーツク海とのコントラストの素晴らしさに感慨を覚える・・・なんて悠長なことは言ってられない。
90kmの関門が迫っているので、とにかく先を急ぐ慌しさと疲れで、この美しい景色を愛でて、写真を撮る余裕は全く無かった。
今思うと、こんな素晴らしい場所を走っているのに、本当に残念だった。


延々と片道約10kmほど続くワッカ原生花園内の道をペースが遅いながらも走る。
何の変わり映えもしない、細かいアップダウンが多い道がどこまでも続くので、ここも相当な精神力が必要だ。いつ心が折れてしまってもおかしくない。
あ、中村優さんに追いついた。
彼女も自分と同じで相当辛そうだ。
スマイルランナーと呼ばれているが、さすがにここまで来ると笑顔ではない。
せっかく同じくらいのペースで走っている貴重な機会なので、声のひとつでもかけたり、握手などをお願いしたりしたいものだが、自分にそんなことをする余裕は全く無く、彼女もそれに応えられる余裕が無いであろうことは同じ立場の自分が一番よく分かっているので、声を掛けるようなことは一切しなかった。
ここら辺は、彼女とほぼ同じペースで走っていたので、抜きつ抜かれつのデッドヒート。
ようやく辿り着いたワッカ原生花園の折り返し地点でも、自分のすぐ後に折り返したのが彼女だった。
8月2日と9日の18時からNHK BS1で放送されるランスマでは、もしかしたら自分が映り込んでいるかもしれない笑



ワッカ原生花園を折り返した直後、90km地点に到達!
関門の制限時間は16時42分に対して、今は16時30分。
良かったぁ、12分前だ。
80km地点ではここまで到達できるのかどうか、本当に不安で仕方が無かったが、何とか90km地点まで来る事ができて、ほっとひと安心。
サロマ湖100kmウルトラマラソンの過酷さを思い知らされ、考えが甘過ぎた自分を呪い、一時は諦めかけたものの、無事ここまで来る事が出来た。
ゴール地点の制限時間は18時なので、よし、残り10kmを90分で走ればゴールできる!