高いところから失礼致します!

「苦しさはすぐに消える。諦めた事実は永遠に残る。」を心の中で連呼して、マラソン、ウルトラマラソン、超ウルトラマラソンを嗜む変態ドMランナーです。

 「一死を以て大罪を謝し奉る」

8月22日土曜日、翌日の「富士総合火力演習(通称、総火演」に行くために、宿泊先の静岡県沼津市に移動する日だ。
と、その前に、今回、この全国的に有名な「富士総合火力演習」の存在すら知らなかった自分を、大変有難いことに誘ってくれた後輩3人と梅田駅にある大阪ステーションシネマで合流。
日本の戦争映画「日本のいちばん長い日」を、明日、総火演を見学する4人で鑑賞するためだ。
明日、日本が誇る陸上自衛隊の活動内容などをこの眼で見る前に、日本の戦争の歴史を映画を通して知り、心の準備とテンションを高めて臨もう、という後輩の提案に3人とも合意。梅田でこの映画を鑑賞してから沼津に移動しようということになった。

70年前の1945年8月の終戦間際、日本の内閣がどのような経緯を辿って、昭和天皇と閣僚が御前会議でポツダム宣言の受諾を決定し、昭和天皇終戦の「御聖断」をして玉音放送で日本国民に終戦を告げるに至ったのか、その舞台裏を描いた重厚な内容の映画だ。
役者達も、主役級の錚々たる顔ぶれが揃う。
主役となる当時の陸軍大臣阿南惟幾役所広司が演じるのをはじめ、昭和天皇本木雅弘終戦時の内閣総理大臣鈴木貫太郎山崎努玉音放送の文を起草した内閣書記官長の迫水久常堤真一
日本の戦況は敗戦濃厚であるにも関わらず、それを国として受け入れる事ができず、国民に「本土決戦」「一億総玉砕」「全軍特攻」「生きて虜囚の辱め」などを掲げて鼓舞してきたものの、沖縄戦突入、東京大空襲、広島及び長崎への原爆投下などの甚大な被害を受け、いよいよポツダム宣言を受け入れて敗戦を宣言するという苦渋の決断をするまでの過程を、自分が大好きな演技派のベテラン俳優達が演じていて、とても面白かった。
名のあるベテラン俳優の中で唯一若手の松坂桃李が、最初は「この内容を台無しにしないかな・・・」と勝手に心配になっていたのだが、全くの杞憂だった。
本土決戦・戦争継続を望む血気盛んな若い陸軍将校のひとりを演じ、日本の降伏を受け入れられず、クーデターを起こして、天皇玉音放送が流れるのを阻止しようとするのだが、彼や彼と共にクーデターを起こす名もしれない若手俳優達の演技が鬼気迫るものがあって、鑑賞後は「演技、うまいなぁ」と感心。自分の眼がフシアナでした、スミマセン。
陸軍将校が集まる作戦本部に、陸軍大将で元首相の東条英機がやって来て、本土決戦のためのクーデターをけしかける時の東条英機とその話を直立不動で拝聴する将校達のやり取りの緊張感あるシーンがとても印象的だった。
そして、陸軍大臣阿南惟幾が8月15日の終戦の日に、部下である陸軍将校達をまとめられずにクーデターを起こしてしまった責任を取って自決することを決断した際の遺書に、

一死を以て大罪を謝し奉る。

という、死ぬことで陸軍を統括できなかった事を謝罪すると共に責任を取るという意味の言葉には感銘を受けた。
現職閣僚が自殺したのは、有史の中でこれが初だそうだ。
今振り返ると、
「何であんな戦争をかつての日本人は起こしたのか?当時の日本人の思想や行動って正気の沙汰ではなかったのでは?」
と思いがちだが、あの時代であればそれは止むを得ない事であり、それもみんな日本の将来のことを思ってのことであったことを垣間知れたし、終戦の日の裏側ではこんなことがあったのかという歴史を知ることができて、とても有意義な2時間だった。
この映画に出てくる俳優達の中に、その他の映画で観られるような客寄せパンダのような人気で演技経験の無い役者はおらず、全く違和感無く見られたし、日本人としてこの内容を観ておいて良かった。
http://nihon-ichi.jp/

事前に会場のど真ん中の席4つを予約。
予想通り、観客には、夏休みなのに若いカップルなどはおらず、年齢層がかなり高めだった。
ミッションインポッシブルやジュラシック・ワールドなどのエンターテインメント性が高い作品が放映されている中にこの映画を選ばないだろうが、戦争経験者が亡くなりつつある今、日本人なら観ておくべきだなぁと思った。